調査研究事業

調査研究事業について


海難審判所及び運輸安全委員会(船舶事故調査部門)の行政目的を補完するため、裁決書及び事故調査報告書の調査、研究(分析)を行っています。
※海難審判所の参考資料 レポート海難審判、JMATニュースレターなど
※運輸安全委員会の参考資料、運輸安全委員会年報、
   運輸安全委員会ダイジェストなど

海難審判所関係


海難審判裁決例調査研究事業

海難審判所が言い渡した裁決の中で、海難を防止するうえで有益、かつ規範性をもった裁決を選定するとともに、判示する事項等を調査研究するものです。
学識経験者、海技専門家、海事補佐人及び海難審判所審判官・理事官により構成する「海難審判裁決例調査研究会」を開催し、裁決例として決定されたものを、「海難審判所裁決例集」として取りまとめ、広く海難防止に活用できるよう、有償にて提供しています。

令和6年度「海難審判裁決例調査研究会」委員(順不同、敬称略)
委員長 矢吹 英雄 東京海洋大学 名誉教授
委員 黒田 直行 弁護士、海事補佐人
委員 滝浦 文隆 一般社団法人日本船長協会 常務理事
委員 大野 浩 海難審判所審判官
委員 桐井 晋司 海難審判所理事官
令和6年度の開催状況
令和6.7.26 第1回裁決例調査研究会
令和6.9.26 第2回裁決例調査研究会
令和6.10.30 第3回裁決例調査研究会
令和5年度「海難審判裁決例調査研究会」委員(順不同、敬称略)
委員長 矢吹 英雄 東京海洋大学 名誉教授
委員 黒田 直行 弁護士、海事補佐人
委員 長田 泰英 一般社団法人日本船長協会 常務理事
委員 安藤 周二 元横浜地方海難審判所長
委員 覚前 修 海難審判所審判官
委員 杉谷 昭 海難審判所理事官
令和5年度の開催状況
令和5.7.24 第1回裁決例調査研究会
令和5.9.6 第2回裁決例調査研究会
令和5.10.3 第3回裁決例調査研究会
令和5.11.2 第4回裁決例調査研究会
最新の海難審判所裁決例集[第65巻(令和5年裁決分:令和7.3刊行)]抜粋
衝突編

(本文)抜粋

貨物船A丸遊漁船B丸衝突事件
(令和5年海審第4号 令和5年12月12日裁決)

千葉県太東埼沖合で貨物船と遊漁船とが衝突した事件

判示事項

(横切り船の航法の適用及び衝突の主因、一因)

太東埼北東方沖合において、北上する貨物船と西行する遊漁船とが衝突した場合、海上衝突予防法が適用されるとしたうえで、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある見合い関係が発生したのち、両船がそれぞれ要求される動作をとる時間的、距離的余裕があったことから、横切り船の航法を適用し、北上する貨物船が、動静監視不十分で、前路を左方に横切る貨物船の進路を避けなかったことを主因とし、西行する遊漁船が、警告信号を行わず、協力動作をとらなかったことを一因とした事例
〔参照 海上衝突予防法(昭和52年法律第62号) 第5条、第15条、第16条、第17条、第34条〕

以下、裁決の内容が続きます(省略)

運輸安全委員会(船舶事故調査)関係


船舶事故事例調査研究事業

ひとたび海難を起こすと、その事件処理は、事故原因究明及び再発防止を担当する運輸安全委員会、船員等の懲戒を担当する海難審判所、刑事裁判及び民事裁判を担当する各裁判所の手続きを経て、それぞれ船舶事故調査報告書、裁決書及び判決書で最終判断が示されます。
本事業は、同一の海難事故について、船舶事故調査報告書を主に、海難審判所裁決書、刑事判決書、民事判決書などをすべて取り上げて整理し、過去の海難統計、類似事例等を加え、さらには事件の解説あるいは再発防止につながるための教訓等をまとめ「船舶事故事例集」として発行し、船舶運航の安全性向上に寄与するものです。
本事業は、公益財団法人日本海事センターの補助金により運営しています。

令和6年度「船舶事故事例調査研究会」委員(順不同、敬称略)
委員長 矢吹 英雄 東京海洋大学 名誉教授
委員 黒田 直行 弁護士、海事補佐人
委員 滝浦 文隆 一般社団法人日本船長協会 常務理事
委員 覺前 修 海難審判所審判官
委員 水間 貴勝 運輸安全委員会事務局 首席船舶事故調査官
令和6年度の開催状況
令和6.10.1 第1回船舶事故事例調査研究会
令和6.12.20 第2回船舶事故事例調査研究会
令和7.2.10 第3回船舶事故事例調査研究会
令和5年度「船舶事故事例調査研究会」委員(順不同、敬称略)
委員長 矢吹 英雄 東京海洋大学 名誉教授
委員 黒田 直行 弁護士、海事補佐人
委員 長田 泰英 一般社団法人日本船長協会 常務理事
委員 横井 幸治 海難審判所審判官
委員 森 有司 運輸安全委員会事務局 首席船舶事故調査官
令和5年度の開催状況
令和5.10.10 第1回船舶事故事例調査研究会
令和5.12.22 第2回船舶事故事例調査研究会
令和6.2.15 第3回船舶事故事例調査研究会
「船舶事故事例集(令和6年度版)」の特徴

(1)第3章掲載6例に、それぞれ概要版を掲載

(2)裁決取消請求訴訟で最高裁判所まで上告された事件を掲載(事例1)

(3)行政の判断と司法の判断が異なった事例を掲載(事例3及び事例4)

(4)同一事故を、見開き左頁[運輸安全委員会報告書]と右頁[海難審判裁決書] で比較

【例】貨物船A貨物船B衝突事故の整理表(抄)
船舶事故調査報告書 裁決書 刑事判決書
原因等 本事故は、福島県いわき市東方沖において、両船が行き会い状態となって互いに気付いていたものの、船長Aが、いずれB船が右転して左舷対左舷で通過すると思い、便所に向かい、また、航海士Bが、右舷側にいるA船がいずれ左転して右舷対右舷で通過すると思い、取扱説明書を読むことに夢中になってA船の存在を忘れ、両船が同じ針路及び速力で航行を続けたため、両船が衝突したものと考えられる。 本件衝突は、塩屋埼北東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近した際、北上するB船が、見張り不十分で、前路を左方に横切るA船の進路を避けなかったことによって発生したが、西行するA船が、船橋当直の維持が不適切で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。 A船船長は、B船を認めていたのであるから、用便のため船橋操舵室から階下のトイレに向かう場合、確実に他の乗組員に見張りの引継ぎをするなど同船との衝突を未然に防止すべき業務上の注意義務を怠った。
B船船長は、A船を認めていたのであるから、同船の動静を目視やレーダー等で注視するなど適切な見張りを行って針路の安全を確認し同船との衝突を未然に防止すべき業務上の注意義務を怠った。
再発防止策、処分等 ・航行中にトイレに行く場合は、船橋を無人にせず、他の乗組員に操船の交代を依頼すること。 ・A船
A受審人:戒告
・B船
B受審人:1か月停止
・罰金
・罪名及び罰条:
業務上過失往来危険
刑法129条2項

運輸安全委員会船舶事故分析事業

運輸安全委員会では、事故の再発防止・事故防止の啓発に向け、事故等調査報告書を分析し、船舶種類、事故種類など具体的なテーマに沿って「運輸安全委員会ダイジェスト」及び「地方事務所における分析」をホームパージで公表しております。当協会では、運輸安全委員会の監修を受け、それらに解説等を加えた「運輸安全委員会 船舶事故分析集~船舶事故から得た教訓~」として、毎年1冊に取りまとめて発刊しています。
社内研修や一般講習用の教材などとしてご利用いただければ幸いです。

最新の船舶事故分析集

「運輸安全委員会船舶事故分析集(令和5年版)」
(令和6年3月刊行)

東京事務局:貨物船・タンカーの居眠りによる船舶事故防止に向けて
遊漁船の安全運航に向けて
~釣り客の脊椎骨折等事故の防止のために~

仙台事務所:プレジャーボートの転覆事故防止に向けて

神戸事務所:安全運航で楽しい遊漁を!

広島事務所:瀬戸内海の漁業を知って、安全な航海を!

長崎事務所:~安心・安全な漁業に向けて~
漁船におけるローラ巻き込まれ事故防止

那覇事務所:漁船の電気火災を防止しましょう

過去に発行した「船舶事故分析集」

「運輸安全委員会船舶事故分析集(令和4年版)」
(令和5年3月刊行)

東京事務局:遊漁船の衝突事故防止に向けて

函館事務所:いか一本釣り漁船関係事故の再発防止に向けて

横浜事務所:東京湾のプレジャーボート関連事故ハザードマップ

神戸事務所:遊夜間におけるプレジャーボートの港湾施設への衝突事故防止に向けて

那覇事務所:潜水器漁業の事故防止に向けて “あなたの潜水器材は大丈夫!?

「運輸安全委員会船舶事故分析集(令和3年版)」
(令和4年3月刊行)

東京事務局:小型船舶の衝突事故防止に向けて~AISを活用しましょう~

函館事務所:海中転落事故の防止に向けて

横浜事務所:東京湾の走錨事故発生状況

神戸事務所:遊漁船・瀬渡船の事故防止のために

広島事務所:漂泊・錨泊していても、まわり見て!~漂泊・錨泊船に潜む危険~

門司事務所:関門・響灘の船舶事故ハザードマップ~関門海峡・響灘における小型船舶事故の現況と再発防止~

長崎事務所:うっかりミスで運航不能に!~燃料不足・バッテリ過放電に気をつけて~

那覇事務所:沖縄の台風と風廻り
那覇事務所:危険度MAX沖縄の北吹きにはご用心!